追憶の60年代カリフォルニア
 =すべてはディランの歌から始まった=
三浦さんが長野ジャーナルより発信中のインターネット・エッセイ
「ぼくが出会った歌、ぼくが出会った人」 アメリカ篇が、
大幅な加筆訂正をほどこし、本になりました。
追憶の60年代カリフォルニア 著者 三浦久

平凡社新書 018 新書判
240頁 定価 740円

1999年9月21日 初版第1刷

ISBN4-582-85018-9 C0295
NDC分類番号 916
プロローグ
1 風に吹かれて Blowin' in the Wind
2 トゥディ Today
3 ウイ・シャル・オーヴァーカム We Shall Overcome
4 ミスター・タンブリンマン Mr.Tambourine Man
5 カラーズ Colours
6 明日は遠く Tomorrow Is a Long Time
7 転がる石のように Like a Rolling Stone
8 バラッド・イン・プレインD Ballad in Plain D
9 愛こそはすべて All You Need Is Love
10 人生の一日 A Day in the Life
11 ハッティ・キャロルの淋しい死 The Lonesome Death of Hattie Carroll
12 時代は変わる The Times They Are A-Changin'
13 スザンヌ Suzanne
14 サウンド・オブ・サイレンス The Sound of Silence
15 ザ・ラスト・シング・オン・マイ・マインド The Last Thing on My Mind
16 ボブ・ディランの夢 Bob Dylan's Dream
17 私は風の声を聞いた I Heard the Voice of the Wind
18 アイ・スルー・イット・オール・アウェイ I Threw It All Away
19 電線の上の一羽の鳥 Bird on the Wire
20 アイ・シャル・ビー・リリースト I Shall Be Released
 エピローグ 1999
著者は1963年から1年間、サンタローザの高校で、66年から69年の夏まで、カリフォルニア大学で学生生活を送った。
ボブ・ディランをはじめとするアメリカの歌の衝撃、禅やカウンターカルチャー、数々の大切な人との出会い。政治学を志した留学生は、宗教学に専攻を変え、歌を歌い始める。

現在、大学で教えながら、フォークシンガーの活動をつづける著者が、きたるべき社会への願いをこめて、60年代という意識のあり方を刻み込んだ自伝的エッセイ。

 (表紙裏 紹介文より)
新著を前に

すべてはディランから
「追憶の60年代カリフォルニア」三浦 久

長野・諏訪湖に近い辰野町の秋の深まりは早い。体をきりりと引き締める冷気に乗って、アコースティックギターの音色が響く。フォークシンガーで英語の教授でもある三浦久さんが歌っている。

1970年代に京都のフォークシーンで活躍した三浦さんは、82年に故郷の辰野町に戻った。今は音楽と英語教育に携わる一方、ボブ・ディランやレナード・コーエン、ブルース・スプリングスティーンらの訳詞も手がける。その三浦さんが、かつて米国西海岸で暮らした体験を本書にまとめた。

63年の高校留学と、66年から69年までカリフォルニア大学で学んだ日々。「そこで出会った人々や歌の思い出を、ノスタルジーではなく、現代と未来への問い掛けのつもりで書きました」

60年代前半には繁栄と安定の香りを残していた米国だったが、「大学留学で再訪したカリフォルニアは、ベトナム反戦、カウンターカルチャーの激動のただ中でした」。政治学を志した三浦青年も、時代の激流の中で、仏教と禅への関心を深め、フォークソングを歌い始める。

ケネディ大統領暗殺の衝撃から書き出される本書は、各章ごとに当時流れていたポピュラーソングのタイトルが付され、三浦さんの実体験と曲の歌詞とメロディーが、読む人の心の中で共鳴していく。

若者文化の聖地ヘイト・アシュベリーで聴いたビートルズ、恋人が歌ったドノバン、「卒業」を上映する映画館で流れたサイモンとガーファンクル....。そして何より強烈だったのは、ボブ・ディランとの出会いだった。

「当時のラジオはビートルズ一辺倒だったけど、ある日、下宿の同居人がかけたレコードから、素朴なギターとハーモニカとだみ声が流れ、[今日のことは明日まで忘れさせてくれ]と歌っていた」名曲「ミスター・タンブリンマン」。「啓示とも言える衝撃を受けました」。ディランは「今も僕の神様」という。

「前回の来日公演のときは、ステージに突進して、サンキュー・ボビー ! と叫んでしまった」

この本で三浦さんは「60年代とは、時代の区分というよりも、意識のあり方だ」と強調する。

「初期の米国には、『独立自営』という生き方の流儀があったのに、20年代以後は、大量生産・大量消費こそ米国だということになった。でもやはり、モノの豊かさだけでは本当にハッピーにはなれないと自覚したのが60年代の意識だと思う。この問題は、現代から未来をも照射しているはずです」

今、7枚目のアルバム「ガビオタの海」の制作が進んでいる。本書に登場する懐かしい人々を歌った「サンタバーバラの夏」という曲も収録される。

  (「追憶の60年代カリフォルニア」は平凡社新書、740円)


みうら・ひさし
1945年千葉県生れ。長野県育ち。米カリフォルニア大卒。京大大学院修了。
京都精華大教員を経て、信州豊南女子短大教授。
訳書に「ボブ・ディラン/一粒の砂にさえも」、アルバム「メッセージ」など。

1999年10月31日(日) 京都新聞より (記事提供: 金魚さん)

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