「ジョン・レノンに捧げる歌」

サエグサ シンジ


ジョンが天国に逝った日、僕はスーパーでアルバイトをしていた。店の有線からたて続けにジョンの曲がかかり、何か変だなと思っていると、先輩が「ジョン・レノンが死んだらしい」と教えてくれた。驚きはしたが、実感はなかった。

バイトを終えアパートに戻り、とりあえずウイスキーを流し込みラジオをつけた。発売されたばかりの「ダブル・ファンタジー」が流れている。「スターティング・オーバー」、なんて皮肉なタイトルなんだろう。

曲の合間に、DJが新しい情報を伝える。「マーク・チャップマンという男が犯人です」「サインを断られたことに腹を立てての犯行です」「ほぼ即死だったそうです」夜の深まりと共に、悲しみと怒りが現実味をおびてこみ上げてくる。祖父母が死んだり、同級生が自殺した時にも感じなかった、何か別の悲しみが拡がっていく。17歳の冬、家を出て一人暮らしを始め、自由と孤独を同時に手に入れた年。1980年は暗い時代の始まりを告げた。


あれから18年、色々な人達がジョンへの想いをこめ文を書き、詩を詠み、歌をうたったが、三浦 久の「ジョン・レノンに捧げる歌」ほどレノン・フリークの気持ちを的確に表現した歌はない。
Mr. Lennon, where are you now?
Mr. Lennon, where are you now?
Mr. Lennon, where are you now?
We miss you and we love you and we thank you
(「ジョン・レノンに捧げる歌」)
探せばきっと手の届きそうな何処かにいそうなジョン。誰もが心の片隅に「ジョンの魂」を持ち続けて生きている。この曲を聞くたび、僕の17歳の風景が鮮明によみがえる。三畳一間の風呂無しアパート。初めて女と一緒に迎えた朝。恐いものが何もなく、斜めを向いて歩いてた頃。もう、オッサンと呼ばれる歳になってしまったけれど、その頃のスピリットは忘れてはいないし、ジョンのメッセージも不変である。



拝啓 三浦 久様

昨日、ジョン・レノンからE-Mailが届きました。
リンゴの木の下で、座禅を組んでいるイラストが添付してあります。そのまま転送します。
お変わりありませんか?

僕は今、ジェリー・ガルシアが誕生日にプレゼントしてくれたマッキントッシュに夢中です。
魔法の黒いノートは、絵も描けるしインターネットもできるので、タイプライターしか知らなかった僕には、とても新鮮です。新曲の歌詞もこれで書いています。

来年の春には、ニューアルバムをリリースしプラネットツアーを行ないます。バックバンドは、ギター/ブライアン・ジョーンズ、ベース/ ジミー・ヘンドリックス、ドラム/キース ムーン、コーラス/ボブ・マーリィ、を予定しています。アルバムのジャケット写真は、先日再会したリンダ・マッカートニーが引き受けてくれました。楽しみに待っていて下さい。

では、また。

マーマレードの空より JOHN

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JOHN LENNON
http://www.heaven's_door.planet/lennon/love&peace/
E-Mail : j-lennon@heaven's_door.planet

1998.11.


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